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京都地方裁判所 昭和52年(わ)508号 判決 1977年10月27日

法人の所在地

京都市上京区下立売通堀川東入東橋詰町一八一番地の一

法人の名称

財団法人 清風苑

代表者の住居

同市上京区下立売通堀川東入東橋詰町一八一番地の一

代表者の氏名

森下邦太郎

本籍

同市上京区下立売通油小路西入東橋詰町一八一番地の一

住居

同市上京区下立売通堀川東入東橋詰町一八一番地の一

法人理事

森下邦太郎

明治三二年六月六日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官佐藤信昭出席のうえ審理し、つぎのとおり判決する。

主文

被告人法人清風苑を罰金七〇〇万円に処する。

被告人森下邦太郎を懲役六月に処する。

この裁判確定の日から被告人森下邦太郎に対し二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人財団法人清風苑は、京都市上京区下立売通堀川東入東橋詰町一八一番地の一に主たる事務所を置き、皇風煎茶の宗家として煎茶道の研究等を行う傍ら、茶道の教授及び茶道具の販売等の収益事業を営むもの、被告人森下邦太郎は、右法人の代表者理事として、その業務全般を統轄しているものであるが、右業務に関し、同法人の理事森下勇夫と共謀の上、法人税を免れようと企て、

第一  昭和四八年四月一日から昭和四九年三月三一日までの事業年度における右法人の収益事業にかかる真実の所得金額は五、五五〇万二、〇四五円で、これに対する法人税額は一、二七六万五、四〇〇円であるのに、公表経理上、許状収入、各会員から徴収する会費収入及び茶道具の売上金等の一部を除外し、あるいは架空経費を計上するなどし、これによって得た資金を仮空名義の預金にするなどして所得を秘匿した上、同年五月二八日、同市上京区一条通西洞院東入元真如堂町三五八番地の上京税務署において、同税務署長に対し、右法人の収益事業にかかる所得金額は三六二万四、〇三七円で、これに対する法人税額は八三万三、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右正当な法人税額と右申告にかかる法人税額との差額一、一九三万一、九〇〇円を免れ

第二  同四九年四月一日から同五〇年三月三一日までの事業年度における右法人の収益事業にかかる真実の所得金額は五、三七四万五、一四四円で、これに対する法人税額は一、二三六万一、三〇〇円であるのに、前同様の不正の方法により所得を秘匿した上、同年五月三一日、前記上京税務署において、同税務署長に対し、右法人の収益事業にかかる所得金額は五一万一、三四五円で、これに対する法人税額は一一万七、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右正当な法人税額と右申告にかかる法人税額との差額一、二二四万三、八〇〇円を免れ

第三  同五〇年四月一日から同五一年三月三一日までの事業年度における右法人の収益事業にかかる真実の所得金額は六、九四〇万四、一二二円で、これに対する法人税額は一、五九六万二、九〇〇円であるのに、前同様の不正の方法により所得を秘匿した上、同年五月二六日、前記上京税務署において、同税務署長に対し、右法人の収益事業にかかる所得金額は二二九万五、六一三円で、これに対する法人税額は五二万七、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右正当な法人税額と右申告にかかる法人税額との差額一、五四三万五、一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人森下の当公判廷における供述

一  被告人森下の検察官に対する供述調書二通

一  被告人森下の大蔵事務官に対する質問てん末書六通(検一〇八乃至一一三号)

一  大蔵事務官作成の告発書

一  法人登記簿謄本(検二号)

一  被告森下作成の証明書(検三号)

一  森下勇夫、森下道子、村田孝、辻正吉の検察官に対する各供述調書

一  片岡憲男(二通検一〇号一一号)森下勇夫(一八通検一二号三六乃至四四号、五七号、七〇号、八五号、八六号、九一号、九九号、一〇〇号、一〇四号)辻正吉(五通検三四号、五三乃至五五号、八四号)村田孝(三通検五九乃至六一号)村田ゑみ子、樋口萬太郎の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書三一通(検一三号、一四号、一六号、二一乃至三二号、四五号、五八号、六三号、七一乃至七三号、七五乃至七八号、八七号、九二号、九四号、九五号、九七号、一〇一号、一〇三号)

一  金谷雅之、石田正一、田中耕次、井上隆人、土本嘉一、飯田清一、和田英夫、酒井半峰、野村他作、藤野捨造、中西義人、岡田元三郎、山崎光造、竹原一雄、上田幸治、芝田清次、水口キク作成の各照会結果回答書

一  森下勇夫(五通検一五号、三三号、三五号、八〇号、八一号)、辻正吉(検五二号)、被告森下外二名(検一〇七号)作成の各確認書

一  大蔵事務官作成の現金、預金、有価証券現在高確認書三通(検九六乃至九八号)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税計算書(検七号)、証明書(検四号)及び査察官調査書(検一七号)

判示第二及び第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(検一八号一〇五号)

一  山本鶴之助作成の照会結果回答書(検二〇号)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税計算書(検八号)及び証明書(検五号)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税計算書(検九号)及び証明書(検六号)

(法令の適用)

被告人森下の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項刑法六〇条に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文一〇条により犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人森下を懲役六月に処し、右被告人森下の犯行は被告人法人清風苑の業務に関しなしたものであるから法人税法一六四条一項に従い、同法人の各犯行に対し同法一五九条一項二項を適用し右各犯行は刑法四五条前段の併合罪の関係にあるから同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人法人清風苑を罰金七〇〇万円に処すこととし、被告人森下に対しては、後記情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予することとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 藤川真之)

(量刑事情)

被告人法人清風苑は本件犯行後昭和四八年分乃至同五〇年分の本税、加算税、延滞税等修正申告し、右各税合計約五六〇〇万円を完納していること、再犯防止のため税務署係官の指導のもとに諸施策を講じたこと、被告人森下は本件犯行への関与については犯意は認められるものの細部に亘って具体的に共犯者森下勇夫に逐一指示して実行させたものであることは認められず、本件の具体的手段方法等は森下勇夫が計画して実行した事案であって、ほ脱税額について概略を了知していた程度で従って森下勇夫の犯行を容認していたという態様において犯罪を犯したものであること、同人は年令七九才の老令で今日まで多数の弟子を世に送り皇風煎茶礼式の普及発展に貢献してきたこと、被告人森下名義の不動産(玄琢道場の土地建物)を被告人清風苑に返還したことなどの情状を考慮すれば被告人森下に対し刑の執行を猶予するのは相当であるが、ほ脱税額の多額なこと、昭和四〇年ごろにも税務署係官から同種の事実を指摘されて修正申告したことがあることなどをも考慮すると、被告人を懲役刑に処すことによって被告人森下の築きあげてきた名声を損う危険性のあることを勘案しても、弁護人らが主張するように同人を罰金刑をもって処断することは妥当であるとは思われない。

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